解説 配合試験にはどのような試験が必要であるか?

 流動化処理土はプラントで製造、運搬し、現場に打設する時に、完全な充填が可能な(1)流動性があり、しかも(2)材料分離抵抗性があること、そして適切な養生によって供用開始時に、所要の力学的性質を持つ固化が進行しているかどうかを確かめる(3)強度試験が必要です。
 また、流動化処理土は、前述のように調整泥水、建設発生土、固化材を主体にした混合物ですから、それぞれの材料の性質・性能、含水比、単位体積重量、混合割合に応じた混合物の単位体積重量、含水比を知っておくための土質試験・材料試験も必要です。(1)〜(3)については流動化処理土のためだけに用意された試験法ではなく、既に他で用いられていた試験を流用している現状です。
 配合された処理土の密度(単位体積重量)の測定には、泥状土であるため、写真−1に示した要領で、既知の容量の容器に満たした処理土の重量を測定する方法が用いられています。

(1)流動性の測定
 流動性の高い泥状の混合物の流動性判定にはPロート試験(JSCE-1986)が用いられますが、流動化処理土の場合はフロー試験が妥当と思います。フロー試験には「セメントの物理試験方法(JIS R5201-1981)」の土木学会規準の方法、並びに「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHS A313-1992)」の日本道路公団規格の試験法が用いられていますが、装置並びに取扱いが簡便な後者が、最近は広く使われています(写真−2)。

(2)材料分離抵抗性の測定
 
流動化処理土の混合、運搬、打設の過程で固化以前に処理土中から、過剰に水の分離(ブリーディング)が見られないように、その程度を検証する必要があります。この測定には「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率及び膨張率試験方法(JSCE-1986)」の土木学会規準のブリーディング試験方法を準用 しています。(写真−3)

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写真−1

写真−2

写真−3

(3)力学試験
 配合設計、品質管理の指標的な役割を果たしている簡易な力学試験として、地盤工学会基準の一軸圧縮試験(写真−4)が広く用いられています。原則として湿潤雰囲気養生7日、28日(必要に応じて1日、3日を加える)後の側方非拘束の圧縮強さquが力学的性質の指標として活用されています。しかし、流動化処理土の特性を対比するためには、単にquだけでなく、応力〜歪み曲線の形状を対比することが、より有益な判断材料になりうると思います。

 しかし、流動化処理土に、より重要な機能を求める場合、あるいはごく低密度の処理土を用いる場合などでは、拘束圧下の挙動を確かめるために三軸圧縮試験での検討を必要とすることが望ましいと思います。

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写真−4

(4)土質試験・材料試験その他
  流動化処理土の配合設計の際には、各構成材料及び配合された処理土について、少なくとも、それぞれ次の諸量を性格に測定しておく必要があります;

「調整泥水」:

泥水の湿潤密度(単位体積重量、比重)・含水比・土粒子の密度(比重)

「建設発生土」:

含水比・土粒子の密度(比重)・粗粒分の含有率(%)・調整泥水との混合の割合(湿潤重量の比率)

「固化材」:

固化材の密度(比重)・添加量

 固化材を除き、一般の土質試験法によって行いますが、固化材の密度測定は土質試験は適用できませんから、メーカーの資料を参考にすることになります。

 なお、一般にセメント等で土質改良をする場合、室内配合試験と実施工時との混合の精粗を斟酌して、固化材量の割り増しを行うのが慣習的に行われていますが、「流動化処理工法」の場合は室内配合と、プラント混合とに殆ど、差が認められませんので、そう言った観点からの固化材量の割り増しは不要と思います。

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図−5

 その他、固化後の流動化処理土の遮水性を検証するための透水試験は、固化過程での僅かな収縮があり得ること、及び流動化処理土が一般に難透水性(透水係数が10−5〜10−7cm/sec)であるため、普通の透水試験機での測定が難しい場合が多いと思います。そこで、図−5のような、円盤形の処理土供試体を用いて、放射状に水を浸透させる、変水位透水試験器で試験を行い、ほぼ、満足できる結果を得ることできました。

 ”これらの詳細については、土の流動化処理工法(建設発生土・泥土の再生利用技術)「技報堂出版」をご参照下さい。”

(5)配合した流動化処理土について必ず記録しておきたいこと
 処理土の構成材料のそれぞれについて、前項(4)に記した諸量は混練りの際にかならず必要であることは言うまでもありませんが、配合が決まった「流動化処理土」について、品質管理上大切ですから、次の事項は必ず記録して下さい;

含水比
密度(単位体積重量)
流動性(フロー値)
材料分離抵抗性(ブリーディング値)
強度(一軸圧縮試験の結果:応力〜歪み曲線、qu) 「養生期間は7日、28日を選ぶことが多い」