解説5 |
密度の高い、比重の大きな流動化処理土は作ることができるか、また、なぜ、密度の高い方が優れているのか? |
砂礫分に富んだ別の建設発生土に、前と同じ泥水を湿潤重量比(p)で0.4程度の量を加え、固化材量は泥水に対して前と同じにして混練りしましたら、やや流動性が落ちた程度で同じように型枠に流し込めました。この両者の構成材の体積割合を比較すると、図−2のようになっていて、かなり普通の土並みの密度の処理土を作ることは確かにできました。しかし面白いことに、7日養生後の一軸圧縮強さは、密度が高くなった割には、両者とも殆ど変わりはありませんでした。
これは粗粒分を増やし、密度が高くなると固化材量が少なくても必要な強さが得られそうな可能性、あるいは土の細粒分からなる泥水への固化材量によって、粗粒分も含んだ処理土の全体の強さが支配されるのかとも想像されます。 |
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図−2 |
しかし、「土」は多様ですから、そう簡単に言い切ることはできません。細粒分を構成している粘土鉱物の性質の違いによって、かなり特殊なものも出てくるのが、その後の実験例で既に分かってきていますので、信頼できる解明にはまだ時間を要すると予想されます。
ですが、我々は努力すると、比重の大きい密実な流動化処理土を造ることは確かに可能であることは間違いありません。ところで、昔から「土は良く締め固めろ」と言われてきました。さて、新しい土とコンクリートの「間の子」的材料である流動化処理土についても、その伝統的教訓が当てはまるのでしょうか。
コンクリートでは円柱形の供試体を軸方向に潰す「圧縮強度」が設計に用いる力学的指標として活用されてきました。地盤・土質工学でも同じ手法の試験を、あえて「一軸圧縮試験」と名付け、試験が簡便である故に、その破壊強さを「一軸圧縮強さ、qu」と呼んで、それを設計・品質管理に便利に使ってきました。しかし、同時に我々は難しい設計条件での検討には、所要の拘束圧下での破壊挙動を知るための「三軸圧縮試験」に頼ってきたのも、コンクリートの場合と違った特徴的事実です。
この違いを質すにはコンクリートが主に、構造部材を造るのに用いられる強度の高い材料であるのに対して、現時点においては、流動化処理土はやはり在来工法での施工ができない場合の、盛土、埋戻し・充填を期する盛土、あるいは地盤を構築する材料であるとの、性格の違いを先ずはっきりと認識すべきであると思います。
梁や柱、版を主体とする構造部材の設計には曲げ、挫屈、圧壊に対する抵抗力を知らねばなりません。その際、コンクリートでは、実用上、簡便な圧縮試験による破壊強度から類推される曲げ強度で判断できますが、一方、土の場合は盛土、地盤が上載荷重を支え得るか否かの、その支持力の判定が求められます。支持力は載荷面下の土の周辺地盤から受ける拘束圧のもとでのせん断強さから想定することになり、単に一軸圧縮強さだけでは不十分で、三軸圧縮試験の助けを借りなければならぬ場合が生じることになります。
流動化処理土の利用される埋戻しでは、一般に土被りが浅いから、拘束圧はそれ程、問題にはならないではとのご意見ももっともです。しかし、地震時などの非常事態においての、周辺の原地盤との相互作用を考えますと、そう簡単に済ませてしまって良いかとの疑問を感じ始めています。
三軸圧縮試験を行って見ますと、一軸圧縮強さquが同じ流動化処理土でも密度が低いものと、高いものとの差が、図−3のように明瞭に表れてきます。
低密度の流動化処理土は一軸圧縮試験の歪み1%位でピーク値であるquを越すと脆く破壊してしまいます。 |
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図−3 |
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しかし拘束圧が増すとピーク値では大きな差はないが、それを越えた後の破壊に至るまでの、残留強度がかなり持続しています。また、ほぼ、同じ一軸圧縮強さを持つと見なされる高密度の処理土の場合には、拘束圧の増加によって残留強度の存在がはるかに顕著に表れてくるのが分かりました。
また、一軸圧縮の際でも、破壊しそうになった後でも、直ぐ壊れずに、以後の歪みの増加に耐えて、少しでも強度を保ち続けようとする領域が、しばらく続いているように見えることは一般の土にはあまり見られない挙動でした。
地盤は脆くなく、完全に壊れてしまうまでにかなり粘り強い抵抗を示してくれることが望ましいのは言うまでもありませんから、この場合、やはり可能な限り高密度な処理土を造ることに努めることが、やはり必要であると信じています。
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