解説3 流動化処理土を、「コンクリート」や「土」と比べてみると

 「コンクリート」は、材質、寸法、粒径の定められ、精選された粗骨材、細骨材、それらを適切に固化させるためのセメント、水、混和剤を目的に応じて配合し混合されたものです。そして、型枠内にびっしりと配置された鉄筋相互の、狭い空間に流し込める流動性を保った流状体で打設され、その後の、適切な養生によってセメントが骨材を緊密に固結させ、所要の強度を得て供用されています。
 一方、「土」は地盤工学会の基準によれば、最大寸法が75mm以下を「土質材料」と称し、礫、砂からなる「粗粒分」と、シルト、粘土からなる「細粒分」に区分されています。ですから土と言っても10cm近い石塊から、ミクロン単位の細かい粒子までの、大きさ、性質、形状の、様々な塊、粒子が入り混じって構成されている、見掛けも、手触りも多様な混合物ですし、それらが時に応じて変わる含有水分と、密度との相関関係で強固な地盤から、軟弱な泥土の状態までの様々な挙動を示しているのです。ですから、「コンクリート」は立派な人工の構造材料で、「土」は砂利から土くれまでの多様な自然物として、両者はお互いに全く違うと見られてきました。


 しかし、双方の構成材をセメントを除いて、固体粒子の構成から見ると、コンクリートの粗骨材は土質材料の礫に、細骨材は砂の範疇に属することになり、その面から見ればコンクリートの骨材は、品質、形状・寸法が定められた、土質材料中の精選されたエリートと見ても良いことになります。そしてその砂礫を、できるだけ密にセメントで強固に緊結したものが信頼度の高い「コンクリート」となるのだと思います。そうした目からは、締固め不要な「流し込み打設」が出来そうだからと、泥状土に固化材を混ぜるだけで打設してみようとの「流動化処理工法」は、まさに、”鵜の真似する鴉”の謗りを受ける懼れがないではなかったのです。
 ただ、唯一の心強い頼りは、ポルトランドセメントが開発される以前から、我が国では砂、粘土、石灰を混ぜて良く締め固めた三和土が随分と立派で、趣のある”たたき(敲土)”として未だに古い民家の土間で使われている立派な実績でした。


 こっそりと実験を試み始めて、データを集めている内に私達は不思議な感銘を覚え始めています。とにかく”泥”と固化材を混合すると、これから説明しますような、何か珍しさを感じさせる”締め固めた土”とは全く異なった挙動を示す、これまでにない、新しい建設材料「流動化処理土」であるとの息吹を感じているのです。
 言うならば「流動化処理土」は「コンクリート」でないことは勿論ですが、どう見ても、いわゆる「土」とは違っている、しかし、やはりどこか、「土」に似通った性質を示す、両者の「間の子」的な性格を持った、私達の身近にあったのに気づかなかった、新しい建設材料と分かってきたのです。